金属加工業のデジタルトランスフォーメーション(DX)その2

昨年、同じタイトルでのブログ公開後、多くの反響をいただきました。しかし、実現が難しい内容である意見も受けましたので、今回はより身近な事例を紹介します。

具体的には、デジタル技術を活用し、女性が活躍する金属加工工場の事例です。

 

愛知県あま市にある株式会社山田製作所https://www.ysei.co.jp/は、1970年創業の精密油圧部品製造メーカーです。2019年には「はばたく中小企業・小規模事業者300社」を受賞し、最近では雑誌「工場管理」の202312月号にも取り上げられました。

50名の従業員のうち32名が女性で、平均年齢は28.8歳です。彼女たちは、加工機やロボットを使い、主体的に作業を行い、高い評価を得ています。工場ではIoTで機械の稼働状態を把握し、タブレットで作業マニュアルや図面を確認でき、生産性と品質を向上しています。

 

一般的な金属加工業では、男性中心の職場が多く、従来のやり方に固執し、外部環境の変化に遅れがちです。しかし、女性が積極的に生産活動に参加することで、仕事の方法が根本的に変える必要性が生じます。デジタル技術の活用は、特に女性が主体的に活躍するための効果的な手段ですから、各種の技術の導入が進むと期待されます。

 

デジタルトランスフォーメーションは、単なる技術導入以上の意味を持ちます。社内のデジタライゼーション、製造から出荷までのデジタル化、顧客との新たな接点の創出など、全面的な変革を意味します。山田製作所では、生産現場で女性が活躍できることを目指し積極的にデジタル技術を用いた業務改善を進めてきた結果、生産性の向上を実現しただけでなく、顧客評価の向上にもつながっています。

 

IoTの活用やタブレットを使った情報共有は、生産性を直接向上させます。まだこのレベルの導入に躊躇する企業も多いですが、進捗管理が不十分な工場とリアルタイムで状況を把握し、適切に指示を出せる工場との生産性の差は明らかです。

山田製作所の事例のように、女性が中心となり、デジタル技術を駆使して生産活動を行うことで、従来の男性中心の職場文化や作業方法を変革できたということは、金属加工業界全体にとって大きな示唆を与えるものです。男性が多数を占める工場で人手不足を嘆くのではなく、女性も積極的に活躍できる環境を整えることが、顧客の評価を高め、業績を向上させる鍵となります。

 

この動きが広がれば、金属加工業界全体で女性技術者が増え、イノベーションと生産性が向上します。多様な人材が活躍することで、柔軟で革新的な思考が生まれ、企業競争力が高まるでしょう。山田製作所の取り組みは、デジタル技術を超えた業界のパラダイムシフトの一例と言えると考えます。

 

20231230

ケイデンスコンサルティング合同会社 

 

代表社員 川下敬之